【書評】倒れない計画術 まずは挫折・失敗・サボりを計画せよ!

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私は計画を立てても、予定通りに仕事が進まず、自己嫌悪に陥る事が多い。そんな経験は誰しもあると思います

本書はそうした計画倒れのダメージを回避するために、事前準備・段取り・スケジューリングという切り口から、なにが正しい段取りなのかが明らかにされていく。科学的に正しい段取りの整え方が身につけば、本当にやるべきことだけに集中できる状態が手に入るというのが著者の考えである。

 

要点

  • スケジュール管理で計画倒れを起こさないようにするには、計画を遂行するための能力、すなわち「段取り力」が必要だ。
  • 計画を成功に導くための手法「MACの原則」を利用し、正しいゴールへと向かう力を身につけよう。その際は「疑問型セルフトーク」を組み合わせると効果的である。
  • 毎日の習慣ほど細かい段取りを決めておき、すぐに実行できるように準備を整えておくべきだ。ただしスケジュールを組むときは空き時間を大切にしなければならない。成長は余白から生まれるからだ。

 

段取り力を高める方法

あなたが1日の仕事を決めるとき、なんとなく過去の経験から1つ1つの作業にかかる時間を決めてはいないだろうか。それぞれの作業にかかる時間をしっかり数値化しない人は多い。だがそれでは「途中で取引先から電話があったから」などと理由づけをして、いつまでもうまく段取りできないのがオチである。

段取り力を高めるには、自分の「モノサシ」を持つことが欠かせない。たとえば資料作りであれば、資料を探すのにかかる時間やテキストを作成している時間など、1つ1つの作業を分解して、かかった時間や手間などを記録していくべきである。このように聞くと、ものすごく手間のかかるやり方だと感じるかもしれない。しかし手間をかけて身につけた動作は、いずれ無意識に処理できる習慣へと変わっていく。

こうすることで「計画錯誤」(なにかに取り組むときにかかる時間や労力を軽めに見積もる傾向)の罠から脱することができるのだ。まずは自分の力を記録することから始めてみよう。

 

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マルチタスクは効率を悪くする

私たちは複数のことを同時におこなうマルチタスクができる人=段取り上手だと思いがちだ。だがそれは大きな誤解である。段取り上手な人は、同時並行でタスクを処理しているのではなく、まずシングルタスクを終わらせてから、次のシングルタスクと向き合うというサイクルを繰り返している。そうすることで複数のタスクが期日内に片付くように処理しているのだ。

ある実験によると、マルチタスクは作業効率を40%低下させ、シングルタスクに比べて作業時間が50%長くなり、作業ミスを50%増加させるという。忙しくしているわりに成果が上がらない人は、マルチタスクの罠にはまっているのかもしれない。自分がなにに集中すべきかを考え、優先順位をつけていこう。

シングルタスクで物事を処理する感覚を身につけるには、15分単位で1つの作業を終える手法がおすすめだ。1つの作業のあいだに2、3分の休憩をはさみ、また次の15分の作業をするという具合に、1タスクずつ着実に片付けていこう。

 

失敗を計画に予定する

「失敗は成功のもと」という格言があるように、学びは失敗から得られるものだ。しかし計画を立てるとき、なぜか私たちは失敗の可能性を考慮しないことが多い。

「こうあってほしい結論」を定めると、私たちはそれに合致する情報だけを集め、合致しない情報は無視するという傾向を持っている。「うまくいけばこうなるはず」「うまくいってほしい」と思っていると、うまくいかせるための可能性にばかり目が向いてしまい、予見可能なはずのトラブルの可能性から目をそらしてしまう。

だからこそ段取りを立てるときは、先に「失敗する、挫折する、計画外のことが起きる」ことを計画に盛りこまなければならない。予想外の事態への対処法を考えてこそ、真の段取り上手といえよう。

 

根拠のあるゴール設定の方法

目標やゴールの設定方法に関するさまざまな研究を検証した結果、現在のところもっとも効果的なゴール設定方法は、目標を数値化し、ゴールまでの道筋を明確にしつつ、目標達成が自分の価値観にもとづいているかを考える。数値化とプロセスの具体化と並行して「本当にやるべきなのか」という価値基準に照らし合わせると、感情に流されずにゴールを設定できる。

 

「疑問型セルフトーク」を組み合わせる

「自分はできる!」といった「ポジティブ思考」だけだと、脳はそれだけで目標をやり遂げたような満足感を覚えてしまい、行動を起こす前にモチベーションが下がってしまう。しかし「自分は本当にできるのか?」「なぜ自分はこれをしたいのか?」「どのようにするのか?」と「疑問型セルフトーク」を使うと、脳は現実的に達成可能なプロセスに目を向け、ゴール設定が明確になっていく。

 

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計画通りに進めるためのテクニック

心理学者のジュリー・K・ノレム博士によれば、人間のメンタリティーはそれまで成功していても「次は失敗するかも」と考える「防衛的ペシミスト」と、根拠はなくとも「次も大丈夫でしょ」と考える「戦略的オプティミスト」に分けられる。

一般的にはポジティブなタイプが成功しやすいと思われているが、実際のところはどちらも成功に向かう資質だ。ただしタイプ別にとるべき戦略に違いがあるため、自分がどちらのタイプかを考え、自分にあった戦略をとることが大切である。なお日本人の大半は、「防衛的ペシミスト」に該当することがわかっている。

どちらのタイプにとっても有効な段取りテクニックが「if-thenプランニング」だ。これはその名の通り、「もしXが起きたら、行動Yをする」と前もって決めておくことを指す。たとえば段取りや計画が崩れそうな場面をイメージし、もしそうなったらどうするかを考え、その対処法を「if-thenプランニング」の形にしておくと、計画倒れを起こしにくくなる。

 

防衛的ペシミストと戦略的オプティミスト

防衛的ペシミストには、不安を段取りに生かし成功率を高めるテクニックが効果的だ。起こりうる最悪な状況を思い浮かべることで、そうならないための対策を立てていく。また防衛的ペシミストの場合、試験前などに不安な気持ちを素直に紙に書き出して試験に臨むと、もっともよい結果が出るという実験結果もある。不安や恐怖心を言葉として書き出せば、それを受け入れて力に変えることができるわけだ。

逆に戦略的オプティミストは事前に考えすぎると成功率が下がるため、本番前はなんらかの方法で気をそらし、リラックスしたほうがいい。余計なことを考えずに、自分が成功するイメージを持って進めると結果につながる。

 

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計画倒れを招く落とし穴

「目標は人に話すと達成しやすくなる」といわれているが、目標を人に話して認められると、それだけで脳が満足してしまい、目標に向けた行動を取れなくなってしまう。むしろ目標を人に話さない人の方が、目標に向けて多くの行動をとっていたという調査結果もある。

 

目標達成できるゴールの設定方法

細かすぎるゴールを設定するのは厳禁だ。モチベーションが低下してしまうからである。「ちょっとこのゴールは違うかもしれない」と感じたときにゴールが細かすぎると、それに縛られやすくなるというリスクもある。しかも複数のゴールがあると、人は難易度の小さい目標にしか取り組まなくなる傾向がある。基本的にゴールの数は少ないほうがいい。

また短期的なゴールを達成したとき、あとはなにもしなくてよいと思ってしまい、目標達成の弊害になりうる。こうした現象を回避するためには、長期的なゴールの確認が必要だ。短期目標を達成したとき、「今日は頑張ったからもう切り上げよう」と感じていないかどうか、自分に問いかけてみるべきである。

 

失敗するとすべて投げ出してしまう心理

ダイエット中に先輩からランチに誘われて、勧められるがままにケーキを1つ食べてしまったとする。すると「もう今日は台無しだから」と、どれだけ食べても飲んでも変わらないような気分にならないだろうか。

いったん段取りやスケジュールが崩れると、自暴自棄になってしまう心理状態を「どうにでもなれ効果」という。これを避けるための対策は3つある。

  1. 継続こそが目標達成につながると納得できるように、長期目標を立てることだ。
  2. 「やめる」目標を「やる」目標に変える。つまり「ダイエット中だからケーキは食べない」ではなく、「ダイエット中だからケーキが食べたくなったら、ナッツを食べる」という形にする。
  3. 「どうにでもなれ効果」から立ち直った数をカウントする。「自分は失敗をしても立ち直ってこられた」という経験が増えていけば、次の失敗に対しても落ち着いて対処できる。この対策は、「どうにでもなれ効果」を遠ざけるうえでもっとも有効である。

 

余白をつくることでチャレンジして成長できる

日々の習慣については、なるべく細かい予定を立てるべきだ。毎日行うことこそ、「今日はどうしようかな」といちいち悩んで決めていたら時間がなくなってしまう。日々の習慣は細かく手順を決め、スケジュールとして時間を確保しよう。

ただしスケジュール帳を埋めることに満足してはいけない。スケジュールが埋まっていれば、忙しくて充実しているように見えるかもしれないが、その先にあるのは単なる現状維持である。人はいまとは違うチャレンジをしてこそ成長するものだ。そのためにはスケジュールの余白が不可欠である。自分がやるべきでないことを捉え、必要ないことを予定から削除し、新たな予定を取り入れていこう。

 

まとめ

科学的に正しい段取りの整え方を身につけることで、計画倒れを防ぐことができます。

重要なのは本書にかかれていることを1つでも「実行」することである。行動変革のた

めの手引きとして、本書をご活用したい。