書評 「女の機嫌の直し方」

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もっと早く読みたかった〜

これを読んでいたら私は離婚することはなかっただろう。笑

「女の機嫌はわからない」、これは、男性たちの永遠のテーマかもしれない。女の機嫌の直し方を知れば、家庭や職場の人間関係が好転すること間違いありません。女性も本書を読むことで、よりあたたかい目で男性を見ることができるだろう。男女が互いの個性を尊重しながら、幸せに生きるための、新たなコミュニケーションの教科書として、本書をおすすめしたい。

 

本書の要点

①脳の「とっさの使い方」には性差があり、それゆえ、男女の間には深いミゾがある。しかし、女性の機嫌の真相を学べば、よりよいコミュニケーションが生まれる。

②女性の対話は「プロセス指向共感型」である。「思う存分経緯を思い出すこと」により、課題への答えが見えてくる。共感によって上手に話を聞いてもらうと、女性脳の演算の質が上がる。これに対し、男性の対話は「ゴール指向問題解決型」である。全体の主幹をシンプルにとらえようとし、結論を先に求める。女性と話す際は、相手の言葉を反復して共感で返すとよい。

③心にないセリフでもかまわない。ことばが優しい気持ちを連れてくるからだ。

 

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なぜ女性たちは、男性の思いもかけないところで機嫌を損ねるのか。

女の機嫌の損ねようには類型がある。本書の狙いは、人工知能脳科学の観点から、男女の脳の違いと女の機嫌の直し方を学んで、対処できるようになることだ。ヒトの脳の機能を精査していくと、男女の性差は歴然と存在することがわかっている。

 著者はかつて、人とロボットの対話の設計に関わっていた。 そこで発見したことの1つが、男女の対話スタイルの違いである。女性は、ことの発端から時系列に沿ってプロセスを語りたがる。一方、男性は、最初に話のゴールを知りたがる。これらが相容れないのも当然だ。

 

女性が愛が足りないと感じる理由

さらには、画像認識のシステムをつくるにあたり、男女の視点の運び方の違いにも気づいた。男性は遠くと近くを交互に見て、ものの輪郭と距離感をつかむ。これに対し、女性は、比較的近くにあるものの表面をなめるように見て、微細な変化も見逃さない。このため、デートをする際、女性は男性が注意力散漫に見えてしまう。自分に集中してくれておらず、愛が足りないと勘違いしてしまうのだ。これが人工知能の研究室で著者が知った、悲しい男女のミゾであった。

 

女性の対話は「プロセス指向共感型」

女性脳がプロセスを語ることを重視するのはなぜなのか。

じつは女性は、ことの経緯を語るうちに、そこに潜む真実を探っている。

 そして、人間関係のひずみや自分の失言などに気づいていく。

 女性の対話は「プロセス指向共感型」なのだ。

重要なのは「思う存分経緯を思い出すこと」である。

 五感をフル回転して認識した状況をリアルに再体験し、経緯をこと細かに話すなかで、答えが見えてくるのだ。

 そのため、話の腰を折られると、真実を探る演算が中断されてしまう。

 逆に共感によって上手に話を聞いてもらうと、演算の質が上がる。

 これが女性脳には共感が必要といわれる所以だ。

 

男性の対話は「ゴール指向問題解決型」

 男性は、全体の主幹をシンプルにとらえようとする。長らく狩りを担ってきた性であるためだ。全体を俯瞰して、ものの位置関係と距離感を正確に把握しようとし、公平性を重視する。よって、女性の、着地点のわからない話に寄り添うことは、男性にはかなり難しい。つい、「何がいいたいんだ?」「結論は?」と話を遮ってしまう。たとえば、妻が「なんだか、腰が痛くて」といったとしよう。男性がいきなり「医者に行ったのか」と返したら、対話は破綻する。正解は、相手の言葉を反復して共感で返すことだ。「腰が痛いのか。それはつらいね」。これだけで女性の脳のストレス信号が減少し、不調が軽減することもある。このように、対話には、女性が好むプロセス指向共感型と、男性が好むゴール指向問題解決型の2種類があることに留意したい。

 

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女性はなぜ共感してもらいたがるのか?

男性なら、こんな疑問をもつかもしれない。女性はなぜ、「転びそうになって転ばなかった話」をし、共感を求めるのか。実は、男性脳からすると情報量ゼロの話が、女性脳にとっては情報価値の宝庫なのだ。「怖い」「つらい」といったストレスを伴う感情が起こるとき、女性脳は、ストレス信号が男性脳の何十倍も強く働き、何百倍も長く残る。ただし、共感してもらうと、この余剰な信号が沈静化していく。安心感を得て、自分の感情を客観視できるためだ。この余剰な信号は、危険な事態を記憶して、二度と同じ状況に自分を追い込まないための防衛手段である。哺乳類のメスにとって、自分や自分の子どもを守るためには、「自己保全」が第一の条件となる。

 

したがって、女性の部下をもつ男性上司は、女性のこうした感情の吐露には、共感する必要がある。余剰な感情が長引かない男性脳には、共感は難しいかもしれない。しかし、共感が女性の仕事への集中力やモチベーションを高めることにつながっていく。

 

女性脳と男性脳の違いとは?

脳の性差は生まれたときから存在する。それは、右脳と左脳を連携させる神経線維の束(脳梁)が、女性脳のほうが太いことに起因する。しかも、女性脳のほうが連携の頻度と密度が高い。右脳は「感じる領域」、左脳は「顕在意識と直結して言葉を紡ぐ領域」である。このため、右脳と左脳の連携がよい女性脳は、感じたことが、次々に言葉になって意識に上がってくる。これが、女たちが察する天才であり、臨機応変に行動できる理由だ。男女は互いに同じ入力に対し、同じ出力を期待すると、すれ違いに悶々としてしまう。脳には明らかに性差があると認めたほうが、日々の暮らしはずっと楽になる。

 

女性脳の臨機応変力のカギは「共感」にあり

女性脳は共感でまわっている。女性たちが口にする「カワイイ~」は、「可愛い」という評価を伝える言葉ではない。「私、心が動きました、あなたも動いた?」というほどの意味である。女性脳では、一部の体験記憶が、その体験時の「心の動き」とセットでしまわれており、「心の動き」を検索キーとして、検索エンジンにひも付けされていく。そのため、予想外のことが起きたとき、「心の動き」をトリガーにして、過去の関連記憶を芋づる式に引き出せる。よって、女性はとっさに行動するのが得意なのだ。

 

この能力が男性より女性に著しいのは、女性が子育てをしてきた性だからである。子どもにトラブルが起きると、過去の関連記憶を総動員して対処することで、より多くの子孫を残してきたにちがいない。これは生まれつきもっている能力で、子どもがいる女性だけの専売特許ではない。

 

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女は特別扱いされたい

女性脳は、脳の異なる領域を連携させて使う、「複雑系認知傾向」をもっている。これに対し、男性脳は、脳を個別の領域で活性化させて使う傾向が高い。合理的な演算をすばやく行う「合理系認知傾向」といえる。複雑系」を多用する女性脳は、混沌とした状況に興奮し、意外性や特別であることを好む。複雑な事象をいちはやく認知できるため、花柄やフリル、左右非対称などを愛し、「今だけ限定」「あなただけ特別」を好む。

対照的に、「合理系」を多めに使う男性脳は、簡潔な事象、無駄な飾りのない、機能性に富んだフォルムを愛する。色数が少ない・直線・シャープが好みの基本だ。

 

女の機嫌の直し方

とにかく共感。いきなり弱点を突くのはご法度。女性に接するときは、とにかく共感を示すこと。男性脳にとっては正しいはずの「いきなり問題解決」は、たいてい、仇になる。もちろん、何でもかんでも共感していると軽く聞こえてしまう。さじ加減としては、「ほどよく共感、ちょっといじる」が正解だ。例えば、職場では、無駄な時間を省くために、すぐさま問題点を突き、一気に解決をめざすことが求められる。それでも、問題点を突く前に「いいアイデアだね」という一言があればどうか。女性は次の提案への意欲がむくむくと湧いてくる。これが女性のモチベーションを下げないポイントである。

 

女性に謝るときの鉄則

男女が一緒にいれば、女性の機嫌を損ねる場面は、当然出てくるだろう。女性に謝るときの鉄則は、女性の気持ちに言及して、真摯に謝ることである。たとえば待ち合わせに遅刻したとき。携帯でうまく連絡できず、彼女を20分待たせてしまったとする。すぐさま遅れた理由を述べるのは間違いだ。ポイントは、彼女の「20分」の気持ちを心配して寄り添うこと。女性脳は、遅れてきたという結果よりも、心細い思いをしたプロセスを重視するからだ。

 

共感していないのに、心のないセリフをいっても、女性が嬉しいのか。そう疑問に思う人もいるかもしれない。しかし、心にないセリフでいい、と著者はいい切る。優しい言葉を発して、妻が笑顔になれば、その男性も「いってよかった」としみじみ感じるからだ。つまり、ことばが優しい気持ちを連れてくる。

 

まとめ

「言えばいいのに」ではなく「気付かなくて、ごめん」。女性脳が喜ぶ対応方法と、その背景を知っておくと、コミュニケーションのモヤモヤがスッキリ晴れていくのを感じるのではないだろうか。究極的には、違う脳を真に理解することはできない。けれども、違う脳であることを知れば、「どうして正しいことをしてくれないのか」とイライラするストレスから解放される。さらには、共感によってコミュニケーションが円滑化し、相手の良さがもっと見えてくる。