【書評】ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代
本書は、「創造的天才たちの秘密」というテーマです。
それぞれで実績を上げて成功する人はいるわけですが、その中でオリジナリティを発揮して成功する人はどういう人なんだろうという話を中心にこの本は1章が進められていく展開です。
世の中には、物事を達成するのに2つの方法がある。1つは、多数派や従来の方法に従い、現状を維持する「コンフォーミティ(同調性)」によってである。もう1つは、これまでの価値観に逆らってアイデアを生み出し、それを率先して実現する「オリジナリティ」によってだ。重要なのは、斬新かつ実用的なアイデアを発想するだけでなく、実際に行動を起こし、より良い状況をつくり出しているという点である。
オリジナリティを発揮するうえで、特別な才能は必要ではない。重要なのは、「好奇心」を原動力に、既存のものに疑問を持ち、より良い選択肢を探すことである。この好奇心とは、既知のものを従来とは違った視点で見つめ、新たな洞察を得る、「ブ・ジャ・デ」を体験することで生まれる。これは、初めて見たのに以前も見たかのように錯覚する「デ・ジャ・ブ」と真逆の状態だ。
要点
- オリジナルな人とは、既存の価値観に逆らい、斬新なアイデアを発想するだけでなく、実際の行動によって、アイデアを実現していく人を指す。
- オリジナリティを発揮するうえで、特別な才能もリスクを冒すことも必要ない。成功者は、ある部分で大きなリスクを冒しつつ、他の部分では慎重になることでリスクを分散している。
- 傑作を生み出す秘訣は、多くのバリエーションを試して、正しいものに突き当たる確率を高めることである。
- 発言を通しやすくするには、「気むずかしい上司」に意見を伝え、味方につけることが効果的だ。
会社の業績を上げるために必要なもの
その中の研究で変わったものがいくつかあって、面白かったのが、パソコンのブラウザー、いろんなものがありますよね、インターネットエクスプローラー・クローム・ファイヤーフォックス・サファリ・・・そのブラウザのどれを使っているのかによって、社員の業績とか欠勤率とかが変わるというものです。
ファイヤーフォックスとかグーグルクロームといった、もともとはパソコンの中に入っていないブラウザを使う人達と、インターネットエクスプローラーやサファリみたいにもともとパソコンに入っているブラウザを使う人達との違いがあって、クローム・ファイヤーフォックスを使っている人たちの方が、業績が高く欠勤率も低いということがわかっています。
例えば会社ですと、続く社員と辞める社員がいますが、この勤務の継続性を調べるとクロームやファイヤーフォックスを使っている人たちは15%も長く勤務していたんです。更に、欠勤率も19%低かったというのです。業績や達成度で見ると、インターネットエクスプローラーやサファリを使っている人たちが、120日で達成する仕事をクロームやファイヤーフォックスを使っている人たちは90日で達成するという話もあります。
これは、単にクロームやファイヤーフォックスに変えれば良いのかっていうことではなくて、クロームやファイヤーフォックスを使っている人たちの特徴は、パソコンが支給されて、そのままでも使えるわけです。でもクロームやファイヤーフォックスを使う人達は、現状に満足しないで、もっと便利に使えるんじゃないかとか考えて自分なりに工夫するわけです。その考え方や習慣が有能な社員をつくっているということなんです。
どのブラウザを使うかが重要なのではなく、現状に甘んじること無く、もっと良い選択肢はないのかということを考えていく姿勢が大事だというわけです。自分から行動をして新しい選択肢を手に入れることが重要です。
傑作を生み出す可能性を高めるには
どの分野においても、創作者はもっとも多く作品を生み出している時期に、もっともクリエイティブな作品を生み出しているという。このように、アイデア創出においては、いかに多くのバリエーションを試して、正しいものに突き当たる確率を高めるかがキーとなる。
チャンスを最大化するタイミング
オリジナルな人はタイミングを味方につけている。起業や製品開発においては、一般的に、真っ先に行動を起こすことが推奨される。しかし、スピーディーに行動して一番乗りになっても、不利益のほうが大きい場合もある。
先延ばしは、生産性の敵になりえるが、創造性の源にもなる。実際のところ、戦略的な先延ばしは、創造性や問題解決能力に秀でた人によく見られる習慣だという。例えば、科学におけるエリートたちは、アイデアを頭の片隅に置き、「さっさと解決しよう」という衝動を抑えて、アイデアを熟成させているという。これにより、幅広くアイデアを検討でき、最終的により良い選択肢を選べるというわけだ。
先に弱点をさらけ出す効果的な方法
一般的に、人を説得するには長所を強調し、短所を控えめに言うべきだと思われている。しかし、斬新なアイデアを売り込む場合や、目上の相手に対して何らかの変化を促す場合には、下手に出て、自身のアイデアの欠点を強調するほうが実は効果的だという。
まとめ
この本には、真に斬新なアイデアを見分ける方法や、アイデアを的確に発信し、支持を得る方法など、オリジナルな目標を現実のものにするためのヒントが宝箱のように詰まっています。それを裏づける事例も実に多彩です。個人のオリジナリティを磨くだけでなく、組織のマネジメントや子育てにも活かせる知見が得られるはずです。