【書評】片づけ脳 部屋も頭もスッキリす

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私は片付けが苦手です。洋服、書類、本など、家に帰るとモノがあふれています。そして、片付けても綺麗な状態が維持できず、すぐに散らかってしまいます。どうにかして片付けられるようになる良い方法はないだろうかと思い、この本を手にとってみました。

 片づけられないのは、面倒でやる気が出ないから、あるいは整理整頓の能力が低いから。そんなふうに思っていないだろうか。1万人以上におよぶ脳画像診断を経験してきた脳内科医である著者によると、片づけられないのは「脳」のせいだという。脳のある部分が弱いため、「片づけられない脳」になっているというのだ。脳の働きを理解し、脳の弱い部分を鍛えることで、片づけができる脳=「片づけ脳」になれる。すると、片づけが得意になるだけでなく、会話が上手になる、観察力が身につく、集中力が上がるなど、実にさまざまなメリットがあります。本書では、脳の弱い部分を見つける方法から、脳を鍛える方法、脳に片づけを習慣化させるコツなどが、わかりやすく紹介されている。

 

要点

  1.  脳細胞が集まり集団になった場所は「脳番地」と呼ばれる。脳番地は、機能別に8系統に分類できる。それらは視覚系、理解系、運動系、思考系、記憶系、感情系、聴覚系、伝達系である。
  2. 脳番地のどこが強いか・弱いかは、人によってさまざまである。自分の脳のクセを見極め、弱い脳番地を鍛えることが「片づけ脳」を身につける第一歩である。
  3. 鍛える順番に迷うときは、運動系→視覚系→思考系→記憶系の順番にトレーニングをするとよい。

 

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片づけられないのは脳のせいだった

脳は人間にとって大事な器官である。人間の感情や思考、行動など、あらゆることが脳の働きに委ねられている。そのため、片づけにおいても、脳がいかに「片づけよう」と働くかがカギとなる。脳には、さまざまな役割が与えられた、1000億個以上の神経細胞が存在している。同じような働きをする細胞が集まり、基地のようになった場所を、著者は住所のように「脳番地」と表現している。

 

脳に弱い部分があるから、片づけられない

これらの脳番地のどこが強いか・弱いかは、人によってさまざまである。どの脳番地が弱いのか、自分の脳のクセを見極めることが「片づけ脳」への第一歩となる。思うように片づけられない原因をたどると、それは脳の使い方のクセ、脳の弱い部分が引き起こしている。

 

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「片づけられない脳」を鍛える脳番地トレーニン

8つの脳番地

脳番地は、機能ごとに次の8系統に分類できる。

 

1.視覚系を鍛える

視覚系脳番地:目で見たことを脳に伝える脳番地。ここが衰えていると、見た情報を正確に処理できない。よって、部屋が散らかっていても、それが視覚情報としてインプットされず目に入らない。

 現代では、スマートフォンの使い過ぎにより、眼球の動きが減っている。これにより、視覚系脳番地が弱ってしまう。視覚系脳番地を鍛えるためのおすすめの方法は、「風景写真を撮ること」である。風景は視野いっぱいに広がるイメージであるため、撮影時に、よいアングルを探そうとして、あちこちに目が動く。これが眼球運動につながり、凝り固まった眼球を柔軟にしてくれる。

また、「人の表情を見ること」もよいトレーニングとなる。具体的には、家族や同僚など、身近な人の表情や顔色をうかがうとよい。日頃から周囲の人の表情を見ていれば、「楽しそうだな、いいことがあったのかな」「体調が悪そうだな」と、変化に気づきやすい。これが視覚系脳番地の発達につながる。

 

2.理解系を鍛える

理解系脳番地:物事や言葉を理解することに関係する脳番地。与えられた情報を理解し、自分を客観視する能力にも関係しており、好奇心によって成長する。また、空間認知にも関係している。この脳番地が弱いと、「どう片づければいいかわからない」という状況に陥ってしまう。

理解系脳番地は、他の脳番地から情報を集めて、現在の状況を理解し、次のアクションを決めるうえで重要な場所である。理解系脳番地を鍛えると、片づけができるだけでなく、会議の議論の理解や複数の仕事の進行も上手になっていく。

理解系脳番地を強化する方法の1つは、「部屋のレイアウト図を書いてみること」である。片づけでは、部屋の広さを把握してオーガナイズしなければならない。そこでメモ帳などに、家や部屋の間取り図を書いてみるとよい。さらに、間取り図の中に、今置いている家具などの配置図を書き込んでいく。紙に書くと、どこにどのくらいスペースがあるか、何がどこに置いてあるかを改めて認識でき、理解系脳番地が鍛えられるのだ。

もう1つの方法は「趣味や立場が違う人とつきあうこと」である。「私はこうだから」と凝り固まるのではなく、さまざまな人、情報と接することが、理解系脳番地の成長を促す。ポイントは旺盛な好奇心をもって生活することである。

 

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3.運動系を鍛える

運動系脳番地:体を動かすことに関係する脳番地。この脳番地が弱いと、動くことがおっくうになり、片づけるのも面倒に感じてしまう。

運動系脳番地を鍛えるのにおすすめなのは、「床に落ちているものを数えながら拾うこと」である。拾うという行為は意外と体を使うので、それだけ運動系脳番地も鍛えられる。利き手と反対の手で拾えば、より効果的である。そのほか、いつもより歩幅を広げてスタスタ歩く、会話を増やして口の周りの筋肉を動かすというのも、運動系を鍛えるトレーニングとして有効だ。

 

4.思考系を鍛える

思考系脳番地:物事を深く考えたり、判断したり、集中力を高めたりする機能が集まっている脳番地。脳の司令塔といえる。この脳番地が弱いと、自分で自分に指示が出せず、物事をすぐには決められない。片づけの基本である「ものの場所を決める」ことが、なかなか実行できなくなってしまう。

思考系脳番地は判断力と結びついているので、判断する機会を意識的につくることが絶好のトレーニングになる。たとえば、外食でメニューを選ぶ際には、「瞬時に決める」とよい。これを繰り返すことで判断力が高まっていく。また、ものを「処分する基準」をもつことも有効だ。処分に悩む代表格といえば、洋服、手紙や年賀状、本や雑誌である。これらを処分する基準を自分で決めて、その基準に従って瞬時に判断していけば、思考系脳番地が鍛えられる。

 

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5.記憶系を鍛える

記憶系脳番地:情報を蓄積する脳番地で、覚えたり思い出したりすることに関係する。知識と感情の連動で強化される。記憶系が弱いと、元にあった場所が思い出せない。

 記憶系脳番地を鍛えながら片づけもできてしまう。そんな最良の方法が「アルバムの作成」だ。アルバムは自分自身のこれまで生きてきたプロセスの集大成である。当時を思い出しながら残したい写真を選ぶことは、片づけ脳になるためのよい刺激となる。また、過去の出来事を思い出し、「懐かしい」という感情が芽生えてくれば、感情系脳番地にもよい刺激となる。

 

6.感情系を鍛える

感情系脳番地:喜怒哀楽といった感情を表現する脳番地。死ぬまで成長し続ける。この脳番地が弱いと、片づけを他人に任せがちになる。

 感情系脳番地を育てるには、わくわくした気持ちをもつことが効果的だ。具体的には、「卒業アルバムから写真を選んで飾ること」がおすすめである。昔の写真や卒業アルバムを見て、子ども時代、青春時代を思い出してみる。すると、ほほえましかったり、気恥ずかしかったりして、感情が揺さぶられる。この感情の揺さぶりこそ、感情系脳番地を活性化させるポイントである。よい思い出を部屋に飾ると、その周囲もきれいにしたくなる。よって、部屋を片づけるきっかけにもなるのだ

 

7.聴覚系を鍛える

聴覚系脳番地:耳で聞いたことを脳に集める脳番地。ここが弱いと、聞いたことを受け止められず、忘れてしまい、行動できない。挙句、片づけも面倒になってしまう。

聴覚系脳番地を鍛えるには、「聞き取ろう」という意志が重要となる。効果的なトレーニングの1つは、「ラジオを聴きながら家事をすること」である。その際、音楽のように聞き流すのではなく、ちゃんと内容を聞き取ろうとする必要がある。

 

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8.伝達系を鍛える

伝達系脳番地:コミュニケーションに関係する脳番地。家族に「片づけて」と言っても、家族が動いてくれないなら、コミュニケーションの仕方に問題があるのかもしれない。

伝達系脳番地を鍛えるには、「他人の家の片づけをまねてみる」とよい。「いいな、私の家もこうしたいな」と思う家を見たら、帰宅後すぐにまねをしてみる。伝達系脳番地は、人のまねをするときに刺激されるのだ。

 

脳によくない習慣を見直す

レーニングを実践して、片づけを習慣化させることで、「片づけ脳」になり、それを維持しやすくなる。そこで大事なのが、脳によくない習慣を見直すこと、気軽に片づけを行う仕組みを取り入れることだ。

脳にとってよくない習慣とは、「睡眠不足」「スマートフォンの過度な使用」「体を動かそうとしないこと」である。「睡眠不足」の状態では脳が覚醒しづらい。ぼんやりしたままでは、片づけはおろか、家事も仕事も中途半端に終わってしまう。そして、「スマートフォンの過度な使用」を続けていると、視野が狭まり、会話が減っていく。これが運動系脳番地、伝達系脳番地、聴覚系脳番地を弱体化させてしまう。

最後に、「体を動かそうとしない」という状態の背景には、「面倒くさい」という思いがある。これに対処するには、意識的に「面倒くさい」と思う回数を減らすとよい。脳番地をしっかり機能させないと、片づけだけでなく、他のこともできなくなってしまう恐れがあるのだ。

 

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片づけを習慣化できる仕組みを取り入れる

次に大事なのが、気軽に片づけを行う仕組みを取り入れることである。たとえば、早寝早起きを実践し、朝起きてすぐに片づけをする「朝片づけ」も効果的だ。朝にスッキリした状態をつくると、あらゆる物事がうまくいく。

また、1週間の片づけをメニュー化して、1週間の片づけリズムをつくるのも手だ。月曜日は1週間の片づけのプランニング、火曜日は「火」を使うコンロや台所まわり、水曜日は水まわりなどとメリハリをつければ、片づけが生活の一部になりやすい。

 

まとめ

「たかが片づけ、されど片づけ」。片づけがテキパキできる人ほど、心に余裕ができ、やるべきことをテキパキとさばける。仕事のパフォーマンスを上げ、ストレスフリーに生きたいと考える方にとって、本書は必読の一冊である。片づけ脳を身につければ、机も頭の中もスッキリする。「片づけ脳」が運を引き寄せ、人生を明るく照らしてくれるはずだ。片づけ脳になれば、「会話上手になる」「テキパキ行動できる」「お金が貯まる」「認知症を予防できる」など、実に多くのメリットがあります。