書評『頭が冴える! 毎日が充実する! スゴい早起き』

早起きをしたい、朝型の生活にしたい、そんな思いを抱きながらもついつい夜更かしや徹夜をしてしまうという人は少なくないはずです。

本書の著者は朝型生活の達人です。偏差値30台だった高校生時代に一念発起し、早朝の勉強で同志社大学、その後はケンブリッジ大学大学院の合格を果たす。現在は英語教室を主宰し、海外の大学や大学院をめざす受講生たちに朝型の勉強習慣をすすめています。

 

要点

①早起きをすることにはたくさんのメリットがある。早朝時間で勉強の効率を上げられるのはもちろんのこと、早起きで自分の時間をコントロールできているという感覚は自己効力感を高めてくれる。

 

②早起きを成功させるには、「早起きしなくちゃ」という気持ちを減らして、「早起きしたい」と積極的に思える環境を作ること。加えて、良質な睡眠をとり、生活リズムを守ることで、早起き生活は習慣にできる。

 

③早起きのリズムを維持しながら日々のパフォーマンスを上げるためには、「体調」と「感情」の両面を大切にすべきである。

 

朝型生活のメリットは、早朝勉強で絶大な効果を上げることだけにとどまらず、朝型に切り替えることで、自分で時間をつくり、自分のために使っているという感覚をもたらしてくれる。この「自分の時間を自分でコントロールできている」という充実感が自己効力感につながり、仕事にもプライベートにも良い影響をもたらします。

 

本書では、早起きを成功させるコツや、充実した朝時間の勢いをそのままに、高いパフォーマンスを保つ生活習慣について、さまざまな方向性から提案をしています。著者の自らの体験や、専門に学んだ心理学の知見とともに説明されていて、どれも確かな説得力を感じさせます。誰しも、これならできる、というものがきっと見つかるはずです。読み終われば、今まで早起きに挫折してきた人も、今度こそがんばろう、早起きをして自分を変えようという気持ちが芽生えるはずです。

 

著者はもともと、早起きが苦手だった。高校1年生時の全国模試で偏差値30台をとってからは、劣等感に拍車がかかってしまった。このままではいけないと、大学受験をめざして少しずつ勉強を始めた。しかし、20時ごろから真夜中まで勉強しても、解けたのは数問だけという日も多かった。そこで改めて自分の予定を見直し、朝5時に起きて2時間勉強することにした。初日こそ眠くて仕方なかったが、一度勉強を始めてしまえば集中力が増していった。朝だと、参考書の内容も驚くほど理解でき、難しい問題でも諦めずに取り組めたのです。

 

 

早起きできる人と出来ない人の違いは?

早起きが習慣化している人とそうでない人の差は、ほんのわずかなこと。それは、「つらいけど、早起きしなくちゃ」という意識の有無である。早起きできない人ほど、つらいが起きなければならないという意識のほうが強い。苦労せずに早起きするための第一歩は、「早起きしなくちゃ」という意識を極力減らすこと。「早起きして買ってきた本を読もう」というふうに、早起きすると楽しいと思える状況をつくること。頑張らずに早起きするには、早起きすると楽しいと思える動機を用意することが、最初のステップとなる。

 

 

早起きするコツについて

加えて、良質な睡眠をとり、生活リズムを守ることで、早起き生活を上手く回せるようになる。すなわち、「動機」「睡眠」「リズム」が、早起き生活成功のキーワードである。このキーワードから導き出される、早起きのコツをいくつか紹介しよう。

 

①早起きして「やりたいこと」をリスト化してみるといい。たとえば、「ジョギングしたい」「買ったばかりの本を読みたい」など、「快の追求」をもとに考えることで、モチベーションが飛躍的に高まる。

 

②質の良い睡眠をとるため、夜の過ごし方に意識を向けよう。睡眠を妨げないよう、寝室にスマホを持ち込まない、カフェインやアルコール摂取を控える、といったことに気を配る必要がある。

 

③睡眠のリズムをくずさないようにするために、睡眠時間を手帳に書き込むという方法がある。睡眠時間は意識して確保しないと、どんどん減っていってしまう。手帳に、何時に寝て何時に起きるのか書き込んでおくだけでも、なしくずし的に時間を浪費しないで済む。

 

 

「早起きトリガー」の活用方法について

著者は、さらに一歩進んで、「早起きしたい」という気持ちが自然と起こるような「早起きトリガー」の活用をすすめている。「トリガー」とは、「引き金」を意味し、効果的な働きかけにより、心理に影響を与え、行動を促すものだ。「早起きトリガー」のポイントは、理性でなく感情を動かすことにある。「早起きトリガー」を生活の中に組み込むことで、知らず知らずのうちに「早起きしたい」気持ちが育っていく。

 

①好きな飲み物を用意するのがおすすめ。ちょっとしたことだが、「飲みたい」という気持ちが勝ってパッと起きやすくなります。著者は大好きな紅茶を飲むことにしているという。自分の心のスイッチがオンになる飲み物や食べ物で実践しましょう。

 

②専用のカレンダーを作って、できた日を塗りつぶすようにするのも効果的。自分の頑張りを可視化しておくと、塗りつぶされていくカレンダーを見るのが楽しくなり、「またやりたい」という気持ちになれる。

 

③寝る前に、「明日の目標」を立てておくということも有効である。明日への期待感があるほど、気持ちが前向きになり起きやすくなる。目標の立て方のコツは、「自分ならできる」「やってみたい」と思える目標にすること。そうすることで、自分への期待感である「自己効力感」が高まり、進んで努力できるので、達成できる確率が高まる。

 

 

朝のゴールデンタイムやるべきこと

朝起きてからの2、3時間は「脳のゴールデンタイム」と呼ばれ、もっとも効率よく脳が働く時間帯だという。この、朝の脳をフル活用することで、1日の成果を高めることができる。取り組むタスクを思考系と作業系に分けて、まとまった時間と集中力を要する「思考系のタスク」に朝の時間を割り当てることがおすすめだ。実際に、「早朝は『意思の力の供給』が一番高まる時間」であるという研究結果もある。つまり、夜は意思力が低下しているが、朝には意思力が高まっているため、難しい問題にぶつかっても乗り越えられるのである。

 

著者自身も、ケンブリッジ大学大学院に入学後、朝の脳を徹底活用することで、学びを確かなものにしていったという。朝に集中して、「難解な英語を読んで自分の意見をまとめる」「課題や文献をたくさん読んで論文を書く」という、レベルの高いインプットとアウトプットに取り組んだ。午後から夜にかけては、授業の復習をしたり、文献の流し読みをしたりして、負荷をかけすぎないように過ごした。このようにして、朝と夜の脳の特性の違いを理解して使い分けることで、取り組みの成果に大きな差が出るのです。

 

 

脳のスイッチを入れる3つの方法

いくら朝の生産性が高いと言っても、起きた直後には脳は覚醒していない。副交感神経が優位になっているからだ。これを交感神経優位に切り替えるために働きかけることが必要。

 

①日光を浴びることである。著者は、朝起きるとすべての部屋のカーテンを全開にするそうだ。朝日は、脳をスッキリ目覚めさせてくれるとともに、良質な睡眠をもたらすセロトニンの分泌を促してくれる。

 

②日光を浴びた後、シャワーを浴びることもおすすめ。ただ、熱いシャワーを長時間浴びると、体がリラックスモードに入ってしまうので、ぬるめのシャワーを短時間浴びるのがよい。

 

③紅茶やコーヒーなど香りの強い飲み物を飲むことは、脳の覚醒という観点からも効果的だ。香りの強いものは、鼻腔を通って脳に刺激を与えるので、脳のスイッチが入りやすくなる。

 

 

パフォーマンスを上げるために必要なこと

早起きリズムを維持しながら日々のパフォーマンスを上げるために大切にしたいのが、「体調」と「感情」だ。体調を整える重要性については多くの人が理解しているところだが、「感情」の方は手薄になりがちである。しかし、感情がゆらぐとパフォーマンスにも悪影響があるので、日頃から感情を乱さず健全に過ごすことは重要。

 

 

体調を整える方法

有酸素運動は脳の活性化につながり記憶の定着にも効果があることがわかっているので、積極的に生活に取り入れるべきだ。そして、有酸素運動と合わせて取り組みたいのが、「自己効力感」を高めるのに一役買ってくれる筋トレだ。筋トレは、自分の限界を超えるチャレンジができるため、モチベーションが高まり、精神的にも安定しやすくなる。

 

 

感情を整える方法

また、感情面においては、負のスパイラルに陥らず、自分を上手に騙して気持ちを切り替えてみよう。気持ちが乗らないときや嫌なことがあった日には、行動から感情へ働きかけると感情を変えられる。具体的には、「鏡の前で笑顔をつくってみる」「誰かに親切にしてみる」といったことで、感情を変えられる。

 

 

心の安定のために役立つ簡単な習慣とは

1日を振り返る時間を設けることも、心の安定のために役立つ習慣だ。心理学的には、記録することは進捗を管理することであり、自己効力感を高める方法の一つなのだという。起こったことや感じたことを文字にするだけで、客観的に自分を見つめることができるようになる。

 

本書は早起きを成功させるコツや、早起きをして生まれた朝時間をきっかけに時間を効率的に使う方法が多数紹介されています。何か新しいことを始めたい、目標を達成したいと感じている人は、本書を通して時間をうまく使うためのヒントが得られるはずです。