年収が上がらない人の特徴

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なかなか収入が上がらないと考えている人はいませんか?

頑張っているのになぜ収入が上がらないのでしょうか。私は、今回御紹介する内容が、まさか収入と関係があるとは全く考えていませんでした。以前、会社員をやっていた時は、下記の状況が全て当てはまっていました。収入が上がらなかったのも当然です。実は、頑張っているのに収入が上がらない人の特徴が3つあります。それに当てはまっていると、どんなに頑張っても収入は上がりにくくなります。

では、収入が上がらない3つの理由を紹介します。

 

理由

1.協調性が高すぎる

協調性が高い子供は周りにチヤホヤされますし、先生からの評価も良くなりやすいので、僕たちは協調性が大事だと言われて育ちました。ところが、これにはネガティブな特性もあり、協調性が高くなればなるほど収入が落ちるということが研究により分かっています。

考えると当たり前のことで、みんなと合わせようとすると抜け駆けになるようなことはしませんし、みんなより抜きん出て成功しようという感覚も出なくなります。協調性の高さというものは、収入の面で考えるとデメリットになります。協調性が高くてももちろん良いですが、独自性も出すことが大事です。ちゃんと言いたいことは言えるようにしたり、プレゼン能力を鍛えるなどの後天的な訓練も必要です。

  協調性を意識的にオフにできる力を身につけないと、周りに引っ張られてしまい、いつまでたっても収入が上がらないという状況に陥ってしまいます。協調性が高い人ほど、自分を独立的な立場に置いて周りの影響を受けないようにしないと、いつまでたってもみんなと同じで収入が上がらないということが起こります。

 

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2.外向性が高く見栄っ張り

外向性が高いという特性に加えて、見栄っ張りという承認欲求の特性を持っている人です。最も破産しやすい性格というものが科学的に分かっていて、それは外向性が高い見栄っ張りです。

外向性が高い人はコミュニケーション能力が高いように見えますが、実際は、初対面の人に対するコミュニケーション能力や嫌われている人に対してのコミュニケーション能力が高いだけです。この外向性の高さに見栄っ張りが加わると危険です。

見栄っ張りな人は、周りから自分がすごいと思われていないと不安でしょうがなくなります。自分が認めてもらえているかということに常に不安を抱えてしまうわけです。

外向性の高い見栄っ張りな人は、多少の成功をした場合、自分がお金を持っているということを不特定多数の人たちにアピールしたがります。それにより、無駄にお金を使ってしまったり、お金を持っていると思われたくてお金を使うようになってしまいます。

収入が高い時はそれでもなんとか回るかもしれませんが、収入が落ちると自分自身の自信も落ちてしまいます。そうすると、その落ちた自信を取り返すように、もっとお金を使ってしまいます。突然破産してしまう人の特徴です。

 

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3.能力に自信がない

これは、収入が上がらない3つの理由のうち最も強烈で危険な特性になります。インポスターシンドロームとは、自分の能力を信じられない特性です。

例えば、仕事がとても順調に進んでいても、それは自分の能力ではなくただの偶然だと考えたり、自分は周りの人に過大評価されているので、いつかは自分に能力がないとばれるのではないかというような不安を抱えている人達です。

急に自分の能力に自信がなくなることがありませんか?評価されて一気に出世したり、一気に有名になった時に、こんな状況がずっと続くはずがないと不安になる状況が誰にでも起こります。

全体人口の70%の人たちが、インポスターシンドロームを人生のどこかで経験するということが分かっています。このインポスターシンドロームが、どのくらい仕事や収入に悪影響を及ぼすのかということを調べた研究があります。238人の大学の卒業生を対象に実験を行っていて、今の仕事に対する満足度や、仕事にどれくらいフレキシビリティがあるか、人生の成功を自分の中でどのように決めているか、自分の決めた仕事をどれくらい理解しているか、自分の思う職場での自分の評価などを調べました。

自分は職場で過大評価されているとか、仕事上のプレッシャーに耐えられない時があるというようなインポスターシンドロームの傾向を調べる質問を行ったということです。それと同時に、インポスターシンドロームの傾向がある人とそうでない人の収入や社会的地位の違いを調べました。

その結果、インポスターシンドロームの人ほど、自分の職業の未来についてとても悲観的で、長期的なプランを立てることもできなくなっていました。それにより収入が上がっていないわけです。

 

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その上に、現在の状況に満足できていない人が多くいました。もっと上に上がりたいというよりも、漠然とした不安を抱えていることで、現状に満足できていない状態です。そうすると目の前のことにも集中できません。さらに、給料が低く昇進もできにくい傾向もありました。

インポスターシンドロームの人は、自分の能力を信じていないので、周りに対して自分の能力をアピールしたりプレゼンすることができません。自分の仕事の中に、自分が役に立つことができるリソースや能力を持っていないと考えてしまうので、実際は、価値の高いリソースや活かせる能力があったとしても、それを安売りしてしまったり、結果的に損ばかりをするようになってしまいます。

自分の能力に自信がないと、自ら自分が損をする選択をしてしまうわけです。自分に自信を持とうとするのではなく、自分の能力を市場から見た時に客観的に正しく理解することができるかということが大事です。

 

自然に続けられるダイエット方法

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 これから夏本番ですね。ダイエットしているけどなかなか痩せないという方はいませんか?もしくは、食事を無理に減らしたくないとか、時間を作ってわざわざジムに行くのが面倒くさいという方も多いのではないでしょうか。今回は、3つのポイントでダイエットが自然に続けられる方法を御紹介します。

 

ダイエットが続く3つの心理的なポイント

 ダイエットやエクササイズは様々な方法が何百種類もありますが、それらのダイエットやエクササイズを調べて、ダイエット効果にはさほど差がないということが研究でも明らかになっています。つまり、どのダイエットを選んでもちゃんとしたダイエットでさえあれば痩せることは出来るわけです。

では、なぜ多くの人は痩せられないのか。それはダイエット法に問題があるのではなくて続けることが出来ないから効果が出ないということです。当然のことですね、続けなければ効果は出ないです。ですから、ダイエット法をいろいろ考えるよりは、自分はこれが面白いとかこれをやろうと思った時に如何に続けられるかということに関して、色々考えたり工夫をこらしたりすることが、ダイエットの一番の近道だと言われています。

 

 

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以下の3つのテクニックが参考になればと思います。

1. カレンダーを使ってチェックする

カレンダーを使って自分がどれだけダイエットを続けられているかを見える化する。カレンダーにまず例えば毎日筋トレをするとか目標をひとつだけ書きます。そしてそれが出来た日は赤色とか目立つペンでチェックマークを入れたりシールを貼っていったりします。家族や自分が普段目にする場所に自分がどれだけ頑張っているのか、どれだけ続けているのかということが見えるようにするだけで、モチベーションを保ちやすくなります。すぐにできる方法です。

 

2. すぐに成果を求めない

すぐに効果や成果が出ることはないので、最初から成果を求めないようにします。一般的にはダイエットは始めても2~3ヶ月は続けないと成果が出ないと言われています。ところが人間はダイエットを始めるとすぐに結果を求めたりしがちです。ですから、最初の3ヶ月は成果を求めないようにしましょう。成果ではなく続けていることが大事なんだと考えてください。3ヶ月以上続いたら結果を求めていくようにすると良いです。

 

3. 他人と比べない

一緒にダイエットをしている相手とか、ブログやテレビとかで劇的に痩せた人を見ると自分はなんで痩せないんだとか考えることもあるかと思いますが、他人と比べることをしないようにします。人間は常に自分の周りの人や理想と今の自分を比べて自分はどうなのかと常に考える生き物です。これは悪いポイントではないんですが、ダイエットに関しては悪いポイントになってしまいます。これにより多くのモチベーションを失うことが多いです。自分は自分です。自分のペースを守って続けていくことを目標にして頑張ってみるとダイエットは続きやすくなります。

 

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無理なくダイエットを続けるには何をやるかよりも、まずは意識を変えることが大切です。この3つの基本的なことに気をつければ自然と余分な脂肪や体重は減らすことが可能です。是非試してみてください。

 

原因不明の頭痛と腰痛を治す方法

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私は以前から、慢性的な腰痛があり、病院や整体、鍼灸などに通ってもなかなか治りませんでしたが、ある生活習慣を変えたことで腰痛を改善することができました。そこで、今回は病院に行っても治らない頭痛や腰痛の正体と対策方法を紹介します。

最近の研究では、ストレスやメンタルの影響がかなり大きいのではないかということが言われています。 頭痛に関しては、そのメカニズムは大変複雑なので何とも言えませんが、腰痛に関しては、ほとんどがストレスや思い込みが原因だとも言われています。意外とメンタルを変えると頭痛も腰痛も良くなったりすることがあります。

 

意外なその原因とは?

例えば、ずっと座ったままでいると血行が悪くなり、メンタルも悪化するので、脳が暴走してしまい痛くもないところを痛いと思い込ませたりすることが起きます。これを防ぐためには、激しい運動をしたりしてメンタルの状態を変えると、疲れているという思い込みが消えます。しかし、病院に行っても治らなかったり、運動をおこなっても治らない頭痛や腰痛もあります。

とある条件のもとでは、人間は痛みに非常に弱くなり、普段は気にならないようなレベルの痛みなのに、急に痛みを感じ始めたりするということがあります。怪我をしている場合などは病院に行くべきですが、病院に行っても治らないとか、原因がよく分からないという場合には、今日ご紹介する内容を疑ってみてもらうことも良いのではないかと思います。

 

 

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結論としては・・・睡眠不足です。

ほんの少しの、気にならないぐらいのレベルの睡眠不足が起きるだけでも、頭痛や腰痛が悪化するということが、カリフォルニア大学をはじめとする大学の研究により分かっています。

研究では、睡眠や痛みの問題に悩んでいない健康な男女を対象に、実験を行いました。十分に睡眠をとってもらった後、参加者たちの足に44度程度の熱を与えて、痛みの強さをチェックしました。その後、別の機会に被験者を睡眠不足の状態にして、同じ温度で足に熱を与えました。よく寝ている時と睡眠不足の時で、痛みの感じ方が変わるのかということを調べたものです。

結論としては、睡眠不足の人たちは、たとえ低温だったとしても、痛みや不快感をとても感じやすいということが分かっています。睡眠不足は、僕たちの脳の痛みに対する感受性を高めてしまうということが、分かり始めています。

なんとなく体がだるいとか、なんとなく調子が悪い、なんとなく頭が痛いとか、ちょっと動いただけなのに腰が痛くなった・・・、そういう人が結構多いと思いますが、もちろん本当に何かが原因な場合もありますが、実は睡眠不足によって痛みに敏感になっているというだけかもしれません。客観的なレベルの痛みは全く同じでも、睡眠不足の状態で、その痛みをより強く感じてしまうということです。

 

 

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ほんの少しの睡眠不足で大きな影響が

被験者たちの主観だけではなく、実際に脳をスキャンして調べてもいます。睡眠不足の状態の被験者達は、脳内の不快感を感じるエリアが、いつもよりもかなり活性化していました。なんと126%も痛みに弱くなっていました。

僕たちは睡眠不足になると、痛みや不快感を126%も感じやすくなるということです。この足に熱を与える実験は25人程度を対象にしているので、その点で若干弱いなと思っていましたが、この研究は色々と行なっていて、脳のスキャンだけでなく観察研究も行なっています。

230人の男女を集めて、毎日の睡眠状態に関するアンケートを取り、同時に体の痛みの変化を調べました。その相関関係を調べると同じような結果が出ていて、ほんの少し睡眠の質が下がっただけで 、参加者の人たちの翌日の痛みに対する感受性が上がっていました。

どのくらいの睡眠の質の悪化が良くないのかと言うと、僕たちが普段全く問題がないだろうと思っているぐらいのレベルです。普段8時間寝ている人が5時間しか眠れなかったら、それは相当なダメージがあっても仕方ないだろうと思いますが、普段8時間寝ている人が7時間半しか眠れなかったとしても、対して支障はないと思うはずです。ところが、このぐらいのレベルの睡眠不足であっても、痛みに弱くなってしまうということです。

ですから、皆さんが腰痛や頭痛などの慢性痛で、病院に行ってもなかなか治らないとか原因が分からないと悩んでいるのであれば、もしかすると、必要なことは睡眠の質を上げることかもしれません。

 

 

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しかし、その状況でゆっくり眠れるとは限りません。睡眠不足による頭痛、不眠症などが疑われるときは以下の対処法を試してみましょう。

入浴をする

緊張型頭痛のときはストレスや緊張、疲労による筋肉のこわばりを軽減することが重要です。ゆっくりとお風呂に入って体を温め、血流をよくするようにするとよいでしょう。血流がよくなるとこわばった筋肉内の疲労物質や痛みの原因物質が流れやすくなります。お風呂の温度は38度から40度程度、肩まで浸かるのではなくみぞおちあたりまで浸かって20分程度、という入浴方法がおすすめです。入浴を終えた後は水分補給を忘れないようにしましょう。

軽い運動

軽い運動をすることで、血流がよくなります。ウォーキングや疲れない程度のジョギングなどがおすすめです。日常的に有酸素運動をすることで、血流がよい状態が続き、緊張型頭痛を予防する効果も期待できます。

 

まとめ 

繁忙期や受験期などで忙しくなっても、睡眠時間だけは確保するようにすることが大切です。頭痛を防げるほか、集中力や注意力の低下を防ぎ作業効率を高めることができます。人によって必要な睡眠時間は異なりますが、自分にとって適切な睡眠時間を把握して、きちんと眠るようにしましょう。

是非参考にしてみていただけたらと思います。

【書評】マインドセット 「やればできる! 」の研究

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凡人には成し得ないようなすばらしい成果をあげている人を見ると、生まれつきの才能はあるものだと私達は思いがちです。しかし才能に恵まれている人がいつも成果をあげているかというと、かならずしもそうではありません。生来の才能があっても正しいマインドがないために、その才能を生かせずに終わってしまう人も多いのです。その反対に、一見すると才能には恵まれていないように思える人が、コツコツと努力して、才能がある人間よりも大きな成果を生むこともあります。

スタンフォード大学心理学教授は、人は変われるという信念のもと、「しなやかマインドセット」の重要性を説いています。人は変わらないし能力は生まれつき固定されていると考える「硬直マインドセット」の人は、生まれつきの優秀さを証明することに躍起になり、一度の失敗で挫折を感じてしまいます。それに対して、しなやかマインドセットをもっている人は、能力は常に伸ばしていけると考えています。

 

要点

  1. マインドセットには、人間の能力は生まれつき固定されたものだと考える「硬直マインドセット」と、人間は成長しつづけられると考える「しなやかマインドセット」の2種類がある。
  2. マインドセットはその人自身や周囲、組織、人間関係から、ビジネスやスポーツなどの分野にいたるまで、あらゆる局面に影響力を与える。
  3. マインドセットがしなやかになると、何事にも臆さなくなり、自分の才能を最大限に生かせるようになる。

 

 

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マインドセットには2種類ある

 人は一人ひとり違うし、それぞれの個性がある。それは自明のことだ。だが頭の良し悪しには、どの程度の違いがあるだろうか。研究者たちの立場は大きく分けて2つある。知能はあらかじめ規定されていて変更が効かないという説と、訓練によって知能は伸ばせるという説である。こうした学問上の論争はさておき、どちらの説を信じるかによって、その人の人生は大きく変わってくるだろう。著者は人間のマインドセットについて、「硬直マインドセット= fixed mindset」と「しなやかマインドセット= growth mindset」の2種類があると考えている。

人間の資質は変わらないと考えている「硬直マインドセット」の人は、最初に配られた手札だけで戦っているようなものだ。そのため失敗を受け入れられなかったり、自分を必要以上に大きく見せたいという気持ちが生まれたりする。

その一方で、人間は成長しつづけられると信じる「しなやかマインドセット」の人は、失敗も成長に必要なこととして受け入れ、自分の現状についても正しく受け止められることが多い。「硬直マインドセット」は他人からの評価に、「しなやかマインドセット」の人は自分を向上させることに興味をもっているといえよう。

 

しなやかマインドセットで、自分を賢く育てる

どちらのマインドセットを選ぶかによって、人生は大きく変わる。能力を固定的にとらえると、一回の結果ですべてが決まってしまうと考えがちになる。そういうマインドセットをもつ人にとって、成功とは自分の賢さを示すことであり、優先すべきは他人に優秀だと評されることだ。すると困難な問題からは目を背け、短期的に解決可能な課題だけに取り組む傾向が強くなる。さらには才能さえあれば努力など必要ないと考え、自分の能力を完全に発揮できなくなることも珍しくない。

しかし能力を流動的なものだと捉え、努力こそが人を賢くすると考える人にとって、失敗は自分を成長させる糧となる。人はみな生まれた時点では、学ぶことが大好きだ。失敗を恐れないし、恥ずかしがったりもしない。ところが成長にともない硬直マインドセットが植えつけられると、たちまち失敗しないことにしか取り組みたくなくなる。そして成長が止まってしまう。

失敗を恐れずに果敢に挑戦し、欠点があれば直そうと試みる。そんなしなやかマインドセットがあれば、たとえ自信などなくても尻込みせず、気楽な気持ちで物事に挑戦できるようになる。

 

 

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しなやかマインドセットがもたらす影響

並外れた天才たちの業績は神話化されやすく、一人で突然輝かしい栄光を手にしたと考えられがちだ。しかし現実はかならずしもそうではない。

たとえばトーマス・エジソンはごく普通の少年であったが、次々に新しいものを生み出そうとする少年の心と情熱をいつまでも忘れなかった。そのマインドセットこそが、彼を天才たらしめたのだ。彼の代表的な発明である白熱電球は、さまざまな人々が集まり、多数の発明が組み合わさってできあがったものだった。しかも彼は自分の発明の価値を知りつくした起業家であり、マスコミに取り入ることもうまかった。けっして気難しいだけの変わり者ではなかったのである。

またチャールズ・ダーウィンも『種の起源』を書き上げるまでに、何年ものフィールドワークや何百もの議論を経ているし、モーツァルトも現在まで残る音楽をつくれるようになるまでの十数年は、凡庸な音楽しかつくれなかった。天才たちの輝かしい業績の背景には、多くの努力があることを忘れてはならない。

 

マインドセットは成績にも影響する

マインドセットは成績とも大いに関連している。困難を避けがちな硬直マインドセットの子供たちは、中学校に上がると成績が下がりがちになる。逆にしなやかマインドセットの子供たちの場合、大変な問題にも果敢に取り組み、成績の低下はあまり見られない。

 また大学生になると、硬直マインドセットの学生は意欲を失う傾向にある。それまで「優秀」で通ってきたぶん、大学に入ると周囲に埋れてしまったと感じるからだ。一方でしなやかマインドセットをもった学生たちは、新しいことを理解しようと試み、結果的に良い成績をおさめやすい。

 著名な教育心理学者であるベンジャミン・ブルームがずば抜けた実績をもつ120人について調査をしたところ、その大多数は幼少期には凡庸であり、本格的な訓練を受けるまで際立った才能は見られなかったそうだ。つまり周囲のサポートを受けながら、たゆみない努力を続けた結果、彼らは頂点に上りつめたというわけである。重度の障害を抱えていないのであれば、「学習できる環境があるかぎり、世界中のほとんどだれでも能力を伸ばすことが可能だ」とブルームは結論づけている。

 

 

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教育者のマインドセットも重要

教育者のマインドセットも、子供の成績に影響を与える。硬直マインドセットの教師の教室では、優秀な生徒は優秀なまま、成績が低い生徒は低いままであった。しかし、しなやかマインドセットの教師の教室では、どの生徒も成績を伸ばした。

しなやかマインドセットをもつように促すうえで、重要なのはほめ方だ。思春期の子供たちを2つのグループに分けて、違うほめ方をするという実験がおこなわれた。一方には「頭がいいのね」と能力をほめ、他方には「がんばったのね」と努力をほめたのだ。グループ分けをした時点では、両グループの成績はまったく同じだった。しかし能力をほめられたグループは硬直マインドセットの行動を示しはじめ、反対に努力をほめられたグループはしなやかマインドセットの行動をとるようになった。

 また生徒全員になかなか解けないような難問を出すと、能力をほめられたグループは「自分は頭が良くない」と感じたが、努力をほめられたグループは解けないことを失敗とは思わずに、さらにがんばらなければと考えた。その後、能力をほめられたグループは成績が落ちこみ、やさしい問題が出されても成績は回復しなかった。

 一方で努力をほめられたグループはどんどん出来がよくなり、ふたたびやさしい問題に取り組むと、すらすら解けるようになっていた。能力をほめると生徒の知能は下がり、努力をほめると生徒の知能は上がるのだ。

 

 

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スポーツは才能よりも練習や精神

さまざまな分野でマインドセットの重要性が注目されはじめている。素質が重要だと考えられているスポーツ分野であっても同様だ。才能はあるが努力できない硬直マインドセットであったために、結果が出ない選手もいる一方で、肉体的にはけっして恵まれているわけではないのに、練習や努力によって才能を伸ばしていく選手もいる。わたしたちは後者から、多くを学べるのではないか。

 あのマイケル・ジョーダンでさえ、高校のときにはチームに選ばれず、第一志望の大学へは行けなかった。そんなときジョーダンの母は息子に「練習して鍛えなおしなさい」と言い聞かせたという。ジョーダンは積極的に厳しい練習に励み、成功を収めた後でも練習を怠らなかった。まさにしなやかマインドセットの持ち主だといえる。わたしたちはついスポーツで成功している人を見ると、それは天賦の才があったからだと考えてしまいがちだ。だがむしろ重要なのは、その努力や練習の過程に注目することなのである。

 

優秀なリーダーの条件

ビジネスの世界でも、企業を超優良企業へと導く指導者は、やはりしなやかマインドセットの持ち主である。『ビジョナリー・カンパニー』の著者ジム・コリンズの調査によれば、長期に渡って好調を維持している企業の指導者は、謙虚で控えめであり、絶えず答えを模索し、たとえそれが厳しい答えであっても直視できる人たちだったという。

 硬直マインドセットの指導者たちは、仕事を愛する気持ちを忘れ、自分の優秀さの証明を優先してしまいがちだ。しかもたとえ会社を破綻に導いてしまったとしても、自分だけは無傷で生き残れると思っている節さえある。

 だが優れたリーダーは建設的な意見に耳を傾け、チームワークを重んじるものだ。彼らは部下へ適切なサポートをし、成長を促すフィードバックを与える環境づくりに力を注いでいる。

 

 

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人間関係もマインドセットで変わる

マインドセットの違いによって、人間関係も大きく変わってくる。硬直マインドセットの人は、他人から拒絶されると自分の価値自体が否定されたように感じ、恨みや復讐心を抱く傾向にある。逆にしなやかマインドセットの人は、相手を許そうとし、前向きな対処をすることが多い。

 硬直マインドセットの人の根底にあるのは、「人は変わらない」という確信であり、人間関係は相性がすべてで、理解しあうのに努力は必要ないと思っている。だがしなやかマインドセットの人は相手と話し合い、理解と親密さを高めつづけていくべきだと考えている。なぜなら人は変わるものだからだ。良好な人間関係を築くうえでも、しなやかマインドセットは必要だといえる。

 

 

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一流の子育てとは

親や教育者にとっても、しなやかマインドセットは重要である。教育心理学者のベンジャミン・ブルームが120名にのぼる世界的なピアニスト、彫刻家、水泳選手、テニス選手、数学者、神経学者を調査したところ、彼らの最初の指導者はほとんどの場合、驚くほど温かくて度量が大きかった。難しい課題を与え、惜しみない愛情を注ぐ。もしできない生徒がいても、諦めたりごまかしたりするのではなく、その事実を子供にはっきりと告げて、向上するための積極的な計画を立てる。そうすることが、その子をいい方向へ導くとわかっているのだ。

すぐれた教師は皆、才能や知能はかならず伸びるものだと信じている。親や教師はつい子供の才能をほめたり、結果を評価したりしがちだが、それは間違えている。子供のしなやかマインドセットを育てたいのであれば、「あなたはこれからどんどん伸びていく人間。私はその成長ぶりに関心があるのだ」というメッセージを送りつづけるべきである。

しなやかマインドセットの根底にあるのは「人は変われる」という信念だ。それはかならずしも容易ではないし、それだけで問題がすべて解決するわけでもない。しかしマインドセットの変化は、人生の質を確実に変える。豊かな人生を送れるかどうかは、マインドセット次第だといえよう。

 

まとめ

本書では硬直マインドセットの短所としなやかマインドセットの長所が、豊富な実例や科学的論拠を交えて解説されている。自分自身をもっと高めたい人、部下のやる気を引き出したい人、子供や生徒の手助けをしたい人に、強くおすすめしたい一冊だ。本書ではマインドセットをしなやかにするためのプロセスが詳細に解説されている。具体例も豊富に掲載されているので、さらに理解を深めたい方はぜひご熟読をおすすめします。

成功するために必要なスキルとは

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皆さん能力や才能がないからといって、行動する前から夢や目標を諦めていませんか?もしくは、もう若くはないから今から新しい事を始めるのは難しいだろうとか。私はあらゆる成功者は、元々生まれ持った才能を持っているとずっと思っていました。そして、若い時のほうが成功しやすいのではないかと考えていました。

 

成功するために必要なこととは

世の中を変えるような大きな成功を掴む為の働き方について紹介します。人が何歳で成功するかということは分かりません。逆に言うと、何歳であっても成功する可能性はあるということが分かっています。ただし、そのためには条件があり、ある状態を保ち続けた場合にはいつかは成功する可能性は高くなります。

 

質と量ともに高いレベルの仕事をできる年齢は?

ノースイースタン大学の研究で、ぼくたちが大きな仕事を成し遂げて成功するのは何歳なのかということを調べてくれています。スポーツ選手のように明らかに若い人の方が有利な分野や、大企業の中で登りつめたいと考えるとどうしても年数がかかりますので別ですが、この研究では1893年から現在に至るまでの数々の科学者を2887人ピックアップし、全員が生涯で出版した論文の引用数を調査し、人間が量と質ともに高いレベルの仕事ができるのは何歳の時なのかということを調べています。

その結果、もし人間に最も仕事が捗ったり大きなことを成し遂げることができる年齢が決まっているとすれば、この研究において明らかな相関が見られるはずですが、世の中に認められるような仕事をすることに関しては年齢は関係がなかったということが分かっています。

つまり、若くして素晴らしい論文をたくさん出している人もいれば、歳をとってから人が変わったように多くの素晴らしい論文を出されている方もいるわけです。

 

 

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成功者の共通点「グリット(やり抜く力)」とは

「グリット(やり抜く力)」とは、ひとつの目標に向かって努力を重ね、達成に向かって長い時間をかけて、粘り強く続けていく力のことです。日本語では「根性・闘志・努力」といったものを指しています。

「社会的成功に必要なのは、才能や知的能力の高さではなくグリット(やり抜く力)だ」という考えを突き止め、著作にまとめて発表したのがアメリカの心理学者アンジェラ・ダックワースです。ダックワースは、コンサル会社を辞め教員に転身し子どもたちに数学を教えているときに、「成績の良い悪いはIQの高低には関係しない」ことに気が付きました。そして、その後調査・研究を重ね、「グリット(やり抜く力)」の存在にたどり着いたと語っています。

生まれもった才能や知的能力ではなく、誰もが今から身につけることができる「グリット(やり抜く力)」が成功に必要な力であるという考えは多くの人に勇気を与え、アメリカの教育省が最重要課題として提唱するほど、注目を集めています。

 

才能・能力よりもやり抜く力が重要な理由

たとえ才能や能力がなくとも目標に向かってやり抜こうと努力をすれば、成功にたどり着くというのが、「グリット(やり抜く力)」をもつことが重要だとされる理由です。才能や能力はただもっているだけでは力を発揮することはできません。そこに、行動しやり抜く力がなければ、宝の持ち腐れとなってしまいます。

ひとつの目標を立てたとき、その目標が高ければ高いほど、達成には長い時間を要します。才能や能力がある人は、目の前の作業を他の人よりも簡単にこなせるかもしれませんが、最終的な目的をクリアするためには、時間をかけて努力し続けなければなりません。そこで必要となるのが、「やり抜く力」なのです。

 

 

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グリット(やり抜く力)で大切な考え方は日々挑戦し続けること

「グリット(やり抜く力)」をもっていれば、才能や能力がなくとも地道な努力を重ねていくことで、成功に一歩ずつ近づくことができます。その一歩がたとえ小さな一歩であっても、日々挑戦し続けることでやらなかった0の状態よりも少しずつ前に進み1が2になり、3…10…100、と成功に近づくことになるためです。

このグリット(やり抜く力)を身につけていくために必要なのは、「失敗を恐れずに挑戦をしていく」ことです。目標に向かって長い期間努力をしていくなかでは、失敗も多く経験することになります。失敗を恐れて挑戦できなければ、前は進めません。「日々挑戦し続けた先に“成功”が待っている」というのが、グリット(やり抜く力)の大切な考え方なのです。

 「どうせ才能ないし…」「能力が足りないから成功するのは無理だろう」と諦めてしまうのではなく、情熱をもって目標に向かって努力を重ねていくことが大切だ、ということに気づかせてくれるのが「グリット(やり抜く力)」の存在です。誰でも今からでも身につけることができる「グリット(やり抜く力)」を自分のものにするために、目標を設定したら失敗を恐れずに挑戦し続ける生活を始めてみませんか?

 

まとめ

その他の研究では、新しいことや世の中を変えるようなことを成し遂げた人は、仕事量が多かったということが分かっています。つまり、一定のペースでアウトプットし続けていると、徐々に慣れてきて苦になることなく仕事ができるようになります。慣れてきたら少しだけ増やしてまたそれを続けていきます。それを続けることで自然と多くの仕事量を当たり前のようにこなすことができるようになります。最終的にはみんなが驚くような仕事量を一定のペースでこなすことができるようになるわけです。無理をすることなく習慣化を意識しながら続けていくことが大事です。

【書評】成功する起業家は「居場所」を選ぶ 最速で事業を育てる環境をデザインする方法

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本書をおすすめしたい読み手は次のような人たちです。起業家、またはこれから起業したいと考えている人、そして、自社の企業文化を変えたいと思っている人たちである。とはいえ、優れたビジネス書の例にもれず、本書も、上記に該当しないビジネスパースンにも役立つ普遍的な着想と知恵が書かれています。

東京大学にて200以上のプロジェクトを支援してきたアクセラレーターの著者は、起業を取り巻く「環境」に注目した。最速で事業を育てる環境をデザインするには? 行動科学・社会学・心理学・経営学などのエビデンスをベースに、そのポイントをまとめあげたのが本書である。

特にこれから起業をしようという初心者を想定して、環境の「選び方」をメインに紹介する。著者の願いは、最終的には一人ひとりが環境の担い手として、環境を育てていく側にまわってほしいというものだ。新しい事業を生み出す立場になるのなら、起業の成功確率を高めるための秘訣を読まない手はない。

 

要点

  1.  本書は「自ら環境を創り出し、環境によって自らを変えよ」という考え方を提示する。
  2. まずは優れた環境に飛び込んでみるとよい。起業家にとって適した環境は、「4つのP」というフレームワークで考えられる。最適な場所(Place)と人(People)を選び、正しく訓練(Practice)をしながらその実践プロセス(Process)を整備することが大事だ。
  3. 「自分の周りの環境を良くすることで自分自身を向上させる」という姿勢をもつことは、起業の成功確率を高めてくれる。

 

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自ら環境を創り出そう

本書が提案するのは、「起業して成功するために環境を変えてみよう」というコンセプトだ。これは、「自ら環境を創り出し、環境によって自らを変えよ」という言葉に集約できる。

もちろん、最初から自ら環境を創り出せる人は多くない。したがって、自らの足らないところや弱さを認めたうえで、まずは優れた環境に飛び込んでみるとよい。その後うまく行けば、後から続く人たちのために優れた環境を創る側にまわってほしい、というのが著者の願いだ。そうしたことを念頭におけば、起業とは、自分たちの事業によって良い会社や社会という環境を創り、多くの人たちに居場所を提供することだと定義できるだろう。

 

起業家にとって最適な環境はどのようなものなのか

環境を変えるとは、タイトルにもあるように、まず「自分の居場所」を変えることである。くわえて、目的に合わせて環境を育てていくことで、各自の中に眠る創造性や実行力を刺激するという意味も含まれる。これらは「運を上げる」ことにもつながる。

では、起業家にとって最適な環境はどのようなものなのか。それを深堀りするために、環境を次の「4つのP」に分けて考えていく。

・Place:どこでやるか?

・People:誰とつながるか?

・Practice:どう訓練するか?

・Process:どう仕組みを作るか?

本書の主張は、最適な場所(Place)と人(People)を選び、正しく訓練(Practice)をしながらその実践プロセス(Process)を整備しよう、というものだ。

 

 

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Place:直面する課題を解消してくれる場所

著者は、東京大学のある文京区本郷に引っ越した。この経験も踏まえて、「住む場所を変える」ことを提案している。引っ越しは、一時的に金銭的コストが発生するものの、一回実行すれば、変化への継続的な意思を持つ必要がない。見逃せないのは、起業で直面する問題は、場所が解消してくれるというケースだ。選ぶポイントとして、「起業家のつながりができる」場所というのが挙げられる。それは特定の地域の場合もあれば、コミュニティの場合もある。著者が提供しているような、起業家支援のプログラムに参加してみるというのも、居場所を変える一手段となる。他の起業家が物理的に近くにいることの効果は見逃せない。

起業前であれば、スタートアップで働いてみるとよい。起業後のイメージを具体化できるうえに、共同創業者が見つかるかもしれない。何より、先輩起業家の近くで働くことが、起業の「代理体験」となり、起業家として成功できるという自信を高める効果がある。また、すでに起業していても、一定期間他のチームとオフィスをシェアして一緒に働くなど、さまざまな手が考えられる。

創造性を育むうえでは、役割が明確ではない「マージナルな場所」こそが重要となる。シリコンバレーの起業物語でよく耳にする「ガレージ」も、マージナルな場所に類似している。使用のルールがなく、人の出入りが自由で、ものが散乱していても問題ない。そのため、実験に適しており、多くの発明が生まれやすい場所だ。

 

People:起業家の力を引き出す人の存在

「あなたは、あなたの周りにいる最も近しい人5人の平均だ」という。この言葉のとおり、大きく環境を変えたいのなら、思い切って付き合う人を変えてみるとよい。起業をめざす人の中には、ネットワーキングを目的としたイベントに参加をする人も多いだろう。しかしこれは、新しいつながりを作るうえではあまり効果がないかもしれない。ある調査によると、新しい出会いに意欲的な参加者ですら、約半分の時間は知り合いとの会話で過ごしてしまうそうだ。

著者がすすめるのは、小さなイベントへの参加である。それもボランティアのように、明確な目的のある継続的な場に参加するとよい。何度も会って行動をともにする中で、強いつながりが生まれてくることが多いからだ。もちろん、つながりをつくる場所を一つに絞る必要はない。複数の異なるコミュニティへの所属を検討してみるとよいだろう。

 

Practice:成長するための機会と練習法

意思決定の質や経営に必要なスキルを磨くうえで役立つのが、教育学者デイヴィッド・コルブが提唱した「経験学習」循環モデルだ。このモデルでは、次の4つの要素が重要だという。

・具体的経験:文字通り具体的な経験を積み重ねること。

・内省的観察:経験や出来事から離れて経験を俯瞰的に見て、多様な観点から振り返り、意味づけること。

・抽象的概念化:経験と内省から他の状況でも応用可能な知識やルール、スキーマを形成すること。

・能動的実験:学んだルールやスキーマを実践して検証すること。

現に米国の調査によると、30歳の起業家は20歳に比べて8.9倍成功しやすく、40歳の起業家は30歳の起業家の1.6倍成功しやすいという。経験を通じて学ぶことで、起業の成功率が高まるためだ。

 

Process:意思決定の役に立つプロセス改善

ビジネスには、意思決定やチーム運営、マーケティング、開発工程など、さまざまなプロセスがある。すべてについて学ぶには膨大な時間がかかる。そこで、今何に最も困っているのかという観点から、適切なプロセスを学び始めるのが望ましい。

そのうえで、汎用的に使えるという点で推奨したいのが、意思決定のプロセスである。多くの起業家は、人材採用やメンバー育成などを初めて経験する。人や組織に関する良いプロセスを学ぶのに参考になる例が、Googleの「re:Work」というサイトだ。面接の適切な回数は何回か、どんなマネージャーが組織に良い影響を及ぼすのかといった、さまざまなプロセスの分析結果が公開されている。こうした情報源を参考にしながら、自社に適したプロセスをつくっていくとよい。

 

 

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複数の選択肢を持つ

ここからは、より良い選択をするための知恵をいくつか紹介していく。基本的に、良い選択のカギは、「複数の選択肢を持つこと」である。たとえば転職のオファーが届いたとき、「A社に転職するかどうか」と悩むより、「A社とB社とC社なら、どこに行くか」と考えるほうが、より客観的な判断ができる。

また、「このビデオを買う」「このビデオを買わない」という選択肢の見せ方と、「このビデオを買う」「このビデオを買わない、その1499円で別のものを買う」という選択肢の見せ方では、選択が異なるという。後者の方が「買わない」という選択肢を選ぶ人が増えたのだ。もともとは同じ情報でも、異なるフレーム(枠組み)で提示されると、異なる印象を与える。これを「フレーミング効果」と呼ぶ。

 

探索と深化

多くの選択肢を持つために有効なのが「探索」である。これは、組織学習における知識の「探索」(Exploration)と「深化」(Exploitation)のモデルとして知られている。組織ではいずれも重要であるが、多くの場合は探索よりも深化に傾いていく。これは個人のキャリア開発においても同様だ。起業家は常に創造性や変化への対応力が求められる。そのため、なるべく多くの選択肢を持てるよう、意識的に探索をしておきたい。

 

意識的に「余裕」をつくる

私たちは「効率性」というわかりやすい目標に向かって、予定を詰めてしまいがちである。しかし、これでは簡単に時間が足りなくなってしまう。大事なのは、「Slack」つまり「余裕」を計画的につくることだ。

企業の組織運営では、必要な人員より10~20%程度多く雇用すると、組織の創造性に好影響をもたらす可能性が高い。この考え方をもとに、予定を入れない時間を意識的につくっておく。そうすれば、時間の欠乏の連鎖を防げるうえに、何もなければその時間を探索にあてることができる。

 

 

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バーベル戦略

株式や債権の投資戦略の一つに、「バーベル戦略」がある。90%程度は超安全な金融商品に投資し、残りの10%をハイリスク・ハイリターンの商品に投資する。つまり、中くらいのリスクは取らないという戦略だ。

この戦略は、深化と探索の両立に活かせる。具体的には、見返りを得やすい深化に9割の時間を割き、探索に1割を使うとよい。探索を行い、仕事以外の人間関係を築くことは、引き出しを増やすこと、孤立しない人生を送ることにもつながっていく。

 

最適な人の選び方

つづいて紹介するのは「秘書問題」である。これは「複数の候補者がいる中で、どうやって最適な秘書を選べばいいのか?」という問題について、数学的アプローチで考えるというものだ。このアプローチによると、最良の選択は、「最初に会った36.8%までは本採用せず、それ以降にこれまでで最も良かった人を選ぶ」というものである。10人の候補者に会うとしたら、3人目まではスルーして、その3人よりは良いと思った人を4人目以降で選ぶということになる。

これをキャリア開発に当てはめれば、最初の10年は3回ジョブ・チェンジをしてみるというアプローチになる。また、スタートアップの事業のアイデアを探索する際にも、最初の3割はスルーするつもりでアイデアを出し続けるほうが、良いアイデアにたどり着きやすいといえる。

 

まとめ

最近は大企業がスタートアップと組むケースが増えてきた。いわゆるオープンイノベーションである。少しでも関わりのある方であれば、事業を成長に導く「環境」のデザイン方法に焦点をあてた本書の内容は、必読といっていい。学びを加速させる場所の育て方、チームの創造性を高めるプロセスなど、読みどころ満載だ。また、要約でもふれたように、成功する起業家は、経験を積んだ年齢の高い世代に多いというデータもある。キャリアを積んできた方は、いちど起業を自分事として考えてみてはいかがだろうか。

【書評】資本家マインドセット

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みなさん「資本家」と聞いたら何を思い浮かべますか。マルクス経済学における資本家は、労働者から搾取して利益を手に入れる「悪役」とされる。しかし、著者の定義する資本家とは、「好きなことを、好きな人と、好きなようにやる」人を指す。サラリーマンに「資本家」としての生き方を呼びかけ、そのためのマインドセットを解説するのが本書の目的だ。

「資本家」になるためには、有限な時間を最大限に活用しなければならない。全ての核になるのは、「他人の時間」ではなく、「自分の時間」を生きることに尽きる。著者は、ベンチャーキャピタリストとして1000人以上の資本家と出会ってきた。そのなかで、資本家がどのような場面で意思決定し、どう行動するかをつぶさに見てきたという。彼らに共通するのは、時間対効果の最大化をめざしているという点だ。

資本家はお金からも働くことからも自由になれる。サラリーマン的マインドセットでは、過当競争を強いられるのに、リターンはわずかしか得られない。資本主義世界のゲームは資本家に有利に働いているからだ。それならば、「資本家マインドセット」を体得し、戦う土俵を変えて、同じ労力で数十倍、数百倍のアウトプットをねらうほうが、人生の満足度も上がるのではないだろうか。そんな希望が見えてくる。

「このままサラリーマンをやっていていいのだろうか?」そんな不安を抱える人は、迷わず本書を開いてほしい。

 

要点

  1.  資本家とは、「好きなことを、好きな人と、好きなようにやる」人を指す。資本家は、自分の時間をつくり出すために、労働時間の「足し算」ではなく、「かけ算」で稼ぐ。
  2.  後継者不足に悩んでいる優良中小企業のなかには、サラリーマンでも購入できる価格の企業もある。企業勤めの経験を生かして、経営を改善することも充分可能だ。
  3.  サラリーマンという形態は今後絶滅する可能性が高い。「資本家マインドセット」を身につけることがすべてのビジネスパーソンにとって必須といえる。

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資本家とは何か?

資本家の定義とは何か。まずは、孫正義さんをイメージしてみてほしい。孫さんが「労働」で得ている賃金は、時給にすると約6万5000円。有名コンサルティング会社の給与よりも安い計算になる。しかし、孫さんには時給の枠ではとらえられない莫大な報酬がある。それは、自分が持っている会社からの配当収入だ。

ソフトバンク株の時価総額はおよそ10兆円。孫さんはその約20%、すなわち約2兆円を所有しており、そこから得られる配当収入は、年間およそ100億円である。会社での役員報酬が「労働対価」であるのに対して、「株主対価」にあたる配当収入には「労働時間」が存在しない。資本家がめざすのは、この労働時間のない収入だ。

その気になればサラリーマンでも、会社の株を持ってその経営を自分のコントロール下に置くことは可能だ。自分の手腕によって会社の事業を成長させ、そこから利益を得るのが「資本家」なのである。

 

資本家はかけ算で稼ぐ

経営者の高齢化が進むなか、多くの中小企業は後継者が見つからないという課題を抱えている。そのため、「信頼できる人が引き継いでくれるなら安くても売りたい」と考えるオーナー経営者は少なくない。小さな会社の値段は意外に安く、サラリーマンでも購入可能だ。

そもそも資本家の仕事とは、「お金を生む仕組み」をつくることだ。サラリーマンは時間を切り売りする以上、稼ぎが爆発的に増えることはない。これに対し資本家は、同じ時間でお金を何倍にも増やす。つまり「足し算」ではなく「かけ算」で稼ぐのだ。

もちろん著者は、「お金持ちになろう」と呼びかけたいのではない。著者の定義する資本家にとっては、お金は幸福を手に入れるためのツールにすぎない。「他人の時間」という「人的資本」を活用しながら、自分の人的資本を最大効率化させる。これこそが資本家がつくるべき仕組みなのだ。

 

 

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サラリーマンでは金持ちになれない

これからの時代のビジネスパーソンは、少なくとも資本家としてのマインドセットを持たなければ生き残れない。 著者によると、サラリーマンの出世競争は、経済学用語でいうところの「合成の誤謬」という。合成の誤謬とは、ミクロレベルで全員が「これが正しい」と思って行動した結果、マクロレベルで予想外の悪いことが起きる状態を指す。

出世競争を勝ち抜こうとすることは、ミクロ視点では正しい。しかし、みんなが同じことを考えて競争に参加すれば、結果的に大差はつかない。しかも、社長の座にたどり着いたところで、給料が何ケタも増えるわけでもない。よって、大差をつけたいのなら、出世競争から離脱して、別の戦い方をする必要がある。

 

金のタマゴを産むニワトリを育てよ

アルバイトの時給は、800円〜1000円が相場だ。また、有名コンサルティングファームコンサルタントの時給は、8万円といわれる。時給には100倍ほどの開きがある。しかし、著者は、時給換算で収入を考えている限り、それは「ドングリの背比べ」だと考えている。

資本家は、資本家という生き方を選んで、必要なマインドセットを身につければ、誰でもなれる。莫大な資産も飛び抜けた才能も必要ない。成功すれば、時給換算など気にならないほどの稼ぎ方ができる。重要なのは、株式配当ストックオプションなどの「金のタマゴ」を持っているかどうかだ。

資本家として「ニワトリ=株」を育てて、毎年「金のタマゴ」を産んでもらえれば、もはや「足し算」の世界ではなくなる。

 

 

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サラリーマン絶滅時代に生き残るために

これまで「ふつう」とされてきたサラリーマンという生き方は、本当に「ふつう」なのか。物質的に貧しかった戦後の日本は、「少品種大量生産」で経済を支えていた。モノをつくればつくるだけ売れた。こうした時代には、会社に忠誠心を持って、決まった給料で定年まで働いてくれる人材が求められた。

会社にとって都合の良い社員を生み出すために用意されたのが、日本企業特有の「社風」だ。よその社風を知らない新卒を一括採用して、教育に手間をかけてでも、自社の社風に染め上げる。その目的は、会社の「兵隊」になってくれる人間を増やすことだ。

一方欧米では、新卒は転職前提で中堅企業やベンチャーにいったん就職して、自分の価値を高めていく。その後、即戦力として人気企業に中途採用されるという雇用形態が一般的だ。現在の「多品種少量生産」の時代には、日本もそのやり方に転じなければ、もはや生き残れないだろう。

 

会社の外に出て、どんな価値を提供できるか?

世界では、プロジェクトごとに集められたプロフェッショナル集団で仕事をするケースが増えている。大企業や資本家が資金とインフラを用意する。そして、そのプロジェクトを実現できる外部の人たちに声をかけて、特命チームを結成するのだ。

働き方の変化は至るところで起きている。たとえば、テスラのようなEV(電気自動車)ベンチャーでは、世界各国のチームメンバーが、インターネットのクラウド上にあるシステムで共同作業をしている。また飲食業では、決まった場所に店舗を持たず、ホテルや空き店舗を使って期間限定で営業する「ポップアップ・レストラン」という形態が流行している。

このような「ポップアップ型」の働き方は、様々な業界で普通になっていく。そうすると、サラリーマンというビジネスモデル自体がやがて破綻するだろう。若い世代が今後も「正社員」の座に安住できると思うのは、危機感が欠落しているといわざるを得ない。まずは、会社の外に出たときに自分に何ができるのか、どんな価値を生み出せるのかを考えることが重要となる。

 

会社を買って資本家になる

日本の中小・零細企業は、深刻な後継者不足に陥っている。すでに年間3万社ほどが廃業しているが、その半分は黒字企業である。このままだと今後10年で、日本の3分の1の会社がなくなりそうだ。これは、高い価値を持つ中小企業が安く買えるマーケットがあるということに他ならない。このような中小企業を廃業前に買えるのは、これから10年程度が限度だろう。プレイヤーが少ない今がチャンスだ。注目すべきは後継者がいない優良中小企業が狙い目である。

 日本企業では、会社のオーナー兼経営者が従業員や取引先と顔を合わせて仕事をしていることが多い。自社を売却しようとしていることを知られたくないと考えている。そのため、オーナーと一対一で条件を話し合うほうが、買い手にとって有利な条件で話がまとまる可能性が高い。「この人なら任せても大丈夫」とオーナーが思えば、値段にはあまりこだわらなくなるためだ。

 

安く買える中小企業をどうやって探すのか

最近では「トランビ」や「バトンズ」といったインターネットサービスで見つけられる。しかし、表に出回っている場合は、買い手の間で競争が発生するため、会社の価格が高くなりがちだ。安く買うためには、可能な限り対面で交渉するほうが有利である。世に出回っていない情報を得るには、営業活動を粘り強くやるしかない。

まずは、中小企業のM&Aをやりたいという考えを示し、周囲から情報を集めるとよい。友人や知人、仕事で知り合った税理士や会計士、不動産業者などに、日頃からアピールしておくといいだろう。社長には社長の友人ができやすいため、知り合いに社長業をやっている人がいれば、有力な情報源になる。営業は資本家として生きるために乗り越えるべきハードルの1つだろう。

 

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画期的なイノベーションは不要

会社を買ったらバリューアップを図る必要がある。だが、中小企業のバリューアップにおいて、画期的なイノベーションを起こす必要はない。大企業のサラリーマンから見たら当たり前のような改革を行うことで、驚くほどの成果が上がることも少なくない。

大企業では常識的な手段でも、中小企業では浸透していないこともある。その意味で、東京と地方の間では「タイムマシン経営」が成り立つ。つまり、いまの東京のビジネスモデルを地方に持っていけばいいのだ。

 

ポートフォリオを組んでリスク分散を

投資家は資産を分散投資することで、リスクヘッジをする。同様に、資本家にもポートフォリオによるリスク分散が求められる。どんなに成功していても、1つの事業に依存した状況は危ういためだ。

 

まとめ

本書には、「好きなことを、好きな人と、好きなようにやる」資本家になるためのヒントが満載だ。もちろん、会社を買うことまではなかなか踏み切れない人もいるだろう。しかし、そうした人にとっても、資本家マインドセットを培うことは、これからの時代を自己裁量で楽しく生き抜いていくために大いに役立つだろう。働き方や生き方に迷い、打開策を求めている方にはぜひ通読をおすすめしたい。